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【小説】若年者のカリスマ

一発書き。
感想はご自由に。



 パソコンを立ち上げる。部下に勧められてつけ始めたブログがどうしても気になるからだ。
 彼は若年層のカリスマである。俗にそう言われている。過剰な高評価なのか、正当な評価なのか、彼自身にも判断がつきかねる。確かに彼は軍の優秀なパイロットである。容姿にも恵まれている。多分、そこを否定できる者は誰も居まい。かえってそれを広報に利用されている。
 それでも彼は不安なのだ。

 筋の通らない罵倒と、いささか盲目的な応援とで、今日もコメント欄は湧いている。
 ため息が出そうだ。普通はアイドルはこうした意見を書き込む欄を閉鎖するものらしいが、彼にはできない。罵倒に対しても応援に対しても平等に接してしまう。むしろ、罵倒のほうを丁重に扱うくらいだ。
 国の犬のくせに情けなくないのか!という投稿がある。何が情けないのか分からない。税金を無駄にするな、などもある。給料でネットをして何が悪いのか全く分からない。筋が通らない。それでも、むげにすれば大人気ないと言われてしまう。応援者もそうした時は手のひらを返したように冷たい。
 荒らしの削除とコメントへの返答を行い、新しい記事をアップする頃には疲れ果てている。
 それでも何とか今日思案したことや出来事を綴る。彼は文才があり、言葉が深いと評されている。もと、小説家になりたかった文学青年の彼にはそう言われることが一種の麻薬的な快感をもたらすものであった。
 自己愛の現れか、何度か自分の書いた文章を読み返して投稿ボタンを押すと、とてもすっきりとして、束の間、充実感に満たされる。
 と、上位階級にある、しかし指揮命令系統には無い『部外者』が入ってくる。
「軍の回線を遊びに使うとはけしからん奴だ」
 言い訳はもう考えてある。そしてそれが通ることも知っている。
「国威発揚のためです。―その旨、元帥閣下にもご理解いただいております」
 元帥の名前を出されてはどうしようもないのだろう。黙って引き下がってくれる。不本意だろうが。
 恐ろしいことに、元帥が彼の直属の上司であるから、決して不当なことでもない。

 今はブログに顔写真すら載せていない。けれども、最近声を聞かせて欲しいとの要望が多い。果たして声をも放送すべきなのだろうか。彼は悩んでいる。
「前からブログを見せていただいています。貴方の書く文章が大好きです。文通してください!」
 重い書き込みだ。もちろん文通をするもしないも自由なのだが…「ファン」の一人ひとりと深く付き合いたくは無い。けれども愛されないアイドルは虚しい。自分の意思が分からない。

 時間になったら勤務・訓練もしないといけない。それが彼の本業なのだから。それに、格好の悪いところは見せられない。若年者の模範でいなければならない。失望して欲しくない。
 面白いと思われるような、もしくは何らかの強い感情を催すような記事を載せなければ、アクセス数が下がる。そして彼は落胆することになるだろう。いつでもどう他人に表現するかばかり考えている。
 彼はアイドルなのである。娯楽の少ないこの国に、許された唯一の。だから、彼はいつでも頑張らなければならない。頑張っているふりをしなければならない。そうでないと人が離れていくから。
 現代における神の両肩には甘い負担が増すばかりだ。
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[ 2008年12月10日 11:49 ] カテゴリ:小説 | TB(0) | CM(0)
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