宇宙‐そらもしくはうみ‐

悠久の時の流れと、果てしなき広がりを持つもの……

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【小説】節穴さんの誕生

拘束した上で、目も閉じられないよう固定する。そこに光を照らす。
これには疲労した人間を眠らせないという効果があるそうだ。

傍らに一人だけ青年将校が立っている。背が高く、整った顔立ちをしている。固い表情からは何を考えているか窺い知れない。

「何をされても、口を割りません。僕は」

気丈にも台の上の彼は言う。それまでに散々何時間も暴力を受け、皮下出血や傷のある体で尚も抗う。
殊勝なことである。しかし、もう将校にはどうでも良いことであった。
確かこの者は内通、脱走をしようとしたのであったか。その罪状すら将校は適当にしか把握していなかった。

「そうか。…よろしい」

その言葉を許しの意図と捉えてか、心なしか脱走者の表情が安らぐ。

「残念だ。君も志を同じくし、共に国家の繁栄と防衛の一助たらんことを願っていると思ったのに」

確かに脱走者にとってもそうであった。ある時までは。

「貴方には分からないかもしれませんが。敵…だと思っていた人たち、あの人たちが教えてくれた平和と自由は本当に素晴らしかった」

彼は主張した。

「今こそむしろ和睦をすべきと私は…あ」

口を止めたのは、将校から発せられる気配が変わったのを感じ取ったからだ。穏やかに、笑ってすらいるのに。どうして。

「我々が追い求めるべき理想は一つ。その実現の前には無限の闘争がある。それを超えた先にしか真の平和も自由もない。それ以外の全ては偽りだよ」

長年一緒に戦って何故それを忘れたのかと不思議そうに将校は続けた。

「あ、あなた方は間違っている」

震えた声で言う彼の瞳を将校が覗き込むようにじっと見ている。緑色の、視力は良いが取り立てて変わったところもないはずの瞳。

「綺麗な、澄んだ目をしているというのに。同志の啓蒙を受けてきたにもかかわらず、ひらくことは無かったか…」

将校が取り出したのは、刃物。
その禍々しさに脱走者はおののいた。ここに来て拘束されていることに焦る。

「見えない目なら、要らぬよな」

抵抗のできない彼の左目の縁に刃物を突き立て、将校は流血をもろともせず、ぐりんと眼球を抉り取った。勿論視神経も断ち切れた。

激痛に呻く彼はやがて気を失ってか言葉を失くし、将校はくり抜いた眼球を液体の入った壜の中に、す、と落とした。
こんな物でも標本として欲しがる人間がいるのであった。そうでなくてもいささか勿体無い。

風の噂で伝わり、将校に「節穴さん」というあだ名がつく元となった一件だった。
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[ 2015年06月27日 23:28 ] カテゴリ:小説 | TB(0) | CM(0)
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